初学者のための腎病理チェックリスト
□ 生検本数:何本とれているか
□皮質:髄質
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全糸球体数、硬化糸球体数、半月体形成、巣状糸球体硬化:加齢により全節性硬化糸球体数は増加する。硬化糸球体の割合の生理的範囲は、およそ(年齢÷2-10)糸球体では疾患によって皮質表層もしくは髄質に近いものを詳細に観察すべき場合がある
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硬化糸球体のつぶれ方、半月体形成の種類
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個々の糸球体の病変:メサンギウム、内皮細胞、上皮細胞、基底膜
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比較的弱拡大で腎門部以外で血管係蹄とボーマン嚢とがくっついてみえる部分があるかどうかをチェックする
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単にくっついている場合(細胞の変化がない場合)は癒着である。癒着部のボーマン嚢の肥厚、ボーマン嚢外の変化、そして2層以上の細胞増殖(管外性増殖)を伴う場合には半月体である可能性が高い。2層以上の管外性増殖がボーマン嚢の1/8周以上みられる場合には半月体である。
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癒着や半月体がある場合には、周囲の糸球体毛細血管もよく観察する。癒着の場合には硝子化や泡沫細胞が、半月体の場合には基底膜の破壊がみられることがある。
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細胞の核が、1つの血管内腔に 2個以上(管内性増殖)、メサンギウム領域に 4個以上(メサンギウム増殖)みられる場合には病的とされている。
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PAS染色で尿細管基底膜と糸球体基底膜の厚さを比較し、糸球体基底膜の方が厚ければ、基底膜に肥厚があると判断する
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PAS染色で基底膜の肥厚、もしくは膜性腎症が疑われ場合には、 PAM染色で基底膜にspikeや bubblingがあるかを観察する
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その他の観察できる基底膜の変化には、二重化(膜性増殖性 GN)、破壊・断裂(壊死性病変;半月体形成を伴う)、 spicula(アミロイドーシス)などがある
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基底膜の菲薄化は光学顕微鏡では分からない
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メサンギウム基質および血管内腔の数や大きさの変化の有無
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基質の増加、硬化、結節形成、硝子化の有無をみる
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メサンギウム基質の幅がメサンギウム細胞核 2個分より広い場合には、基質の増加があると判断する
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細胞増殖を伴わない細胞外基質成分の増加した病変を硬化と呼ぶ。硬化は基質の増加以外にも血管の虚脱で生じる
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病変の拡がりと分布をみる
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全糸球体から、病変のある糸球体数÷(全糸球体数-硬化糸球体数): 50%以上/ 未満でびまん性( diffuse)/ 巣状( focal)
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一つの糸球体で、病変部の面積÷糸球体全体の面積: 50%以上/ 未満で全節性( global)/ 分節性( segemental)
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全糸球体数が 10個以上あると評価が容易である。しかし、膜性腎症などびまん性病変を示すとわかっているものは、少数でも診断可能である。
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巣状の場合には、皮質のどの部位に病変が多いかをみる(被膜直下、皮質深層など)
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糸球体に好中球があるか:非常に多い場合、PSAGN、MPGN。どの糸球体にも2-3個見える程度:経過したPSAGN,IgA腎症の1/3
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HE染色では係蹄壁の肥厚と表現する。PAS染色、PAM染色では基底膜そのものが染まるので基底膜の肥厚や蛇行などの表現はOK
□尿細管・間質(皮質)の障害度:
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障害度は、皮質における障害を受けた尿細管・間質を全体の%として表現する
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変化がある場合には、尿細管萎縮と線維化が主体(慢性変化)か、細胞浸潤が主体(急性変化)かをみる
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マッソン染色がわかりやすい;青色の線維化を示す部分、細胞増殖部、および尿細管基底膜肥厚部(萎縮した尿細管)の割合をみていく
□ 血管病変の有無