腎臓内科・透析・一般内科・在宅・その他のまとめ

主に自分向けの読んだ本・知識のまとめです。

初心者のための気管挿管の適応と挿管困難の場合のメモ

STEP0:挿管適応の確認&準備
 <気管挿管の適応の確認>

・気道確保困難

・酸素化不良

・換気不良 高二酸化炭素血症

意識障害(GCS≦8)

・ショック

 

・一般的に最低限必要な準備:鎮静薬:大体ミダゾラム(すぐ出てくるから。10mgを10ccに溶かし、2ml使って1mlずつ増量していけと書いてあるけど、緊急の場合は5mlくらい初回から一気に使われるが、成書を参考にしてください)。 忘れやすいのはサクションの準備とモニター。その他は病院毎の準備品で大体いける。挿管チューブは男7.5mm-8mm、女性7-7.5mm。7.5mmを軸に考える。
・挿管できない場合のオプションを準備しておく(重要!)簡単なトレーニングで使えるようになる左記がおすすめ:①マスク換気②LMA(ラリンジアルマスク)③ガムエラスティックブジー(GEM)④輪状甲状間膜穿刺キット⑤気管支鏡⑥頼りになる人と仲良くなる
・ 輪状甲状間膜はエコーで探せるように予め練習しておくこと。
STEP1:まずマスク換気。とにかく換気。
    換気が駄目なら緊急事態。LMA(ラリンジアルマスク)トライ。
    LMAがだめなら超緊急事態CVCI (cannot ventilate,  cannot intubate)で可能なら迷わず人手を集めるための緊急コールし、
    気管支鏡で挿管または外科的なアプローチは経皮的気管切開または輪状甲状間膜切開(緊急用穿刺キットがあるので使用する)    
 
STEP2:換気ができればとりあえず気持ちを落ち着け、慌てない。とにかく安全に挿管をすることを考える。
 
STEP3:STEP2の挿管不成功なら、ガムエラスティックブジーか気管支鏡を使って挿管。LMAで時間稼ぎでもOK。LMAでいけたら、LMA越しにガムエラスティックブジー(GEM)を入れて、挿管チューブをマスクとブジーごしに入れて、挿管できたらラリマとブジーを抜去も可。
 
STEP4:駄目なら外科的気道確保。換気ができていれば、やはり慌てない。

初学者のための腎病理チェックリスト

生検本数:何本とれているか

皮質:髄質

  •  全糸球体数、硬化糸球体数、半月体形成、巣状糸球体硬化:加齢により全節性硬化糸球体数は増加する。硬化糸球体の割合の生理的範囲は、およそ(年齢÷210糸球体では疾患によって皮質表層もしくは髄質に近いものを詳細に観察すべき場合がある

  • 硬化糸球体のつぶれ方、半月体形成の種類

  • 個々の糸球体の病変:メサンギウム、内皮細胞、上皮細胞、基底膜

  • 比較的弱拡大で腎門部以外で血管係蹄とボーマン嚢とがくっついてみえる部分があるかどうかをチェックする

  • 単にくっついている場合(細胞の変化がない場合)は癒着である。癒着部のボーマン嚢の肥厚、ボーマン嚢外の変化、そして2層以上の細胞増殖(管外性増殖)を伴う場合には半月体である可能性が高い。2層以上の管外性増殖がボーマン嚢の1/8周以上みられる場合には半月体である。

  • 癒着や半月体がある場合には、周囲の糸球体毛細血管もよく観察する。癒着の場合には硝子化や泡沫細胞が、半月体の場合には基底膜の破壊がみられることがある。

  • 細胞の核が、1つの血管内腔に 2個以上(管内性増殖)、メサンギウム領域に 4個以上(メサンギウム増殖)みられる場合には病的とされている。

  • PAS染色で尿細管基底膜と糸球体基底膜の厚さを比較し、糸球体基底膜の方が厚ければ、基底膜に肥厚があると判断する

  • PAS染色で基底膜の肥厚、もしくは膜性腎症が疑われ場合には、 PAM染色で基底膜にspike bubblingがあるかを観察する

  • その他の観察できる基底膜の変化には、二重化(膜性増殖性 GN)、破壊・断裂(壊死性病変;半月体形成を伴う)、 spicula(アミロイドーシス)などがある

  • 基底膜の菲薄化は光学顕微鏡では分からない

  • メサンギウム基質および血管内腔の数や大きさの変化の有無

  • 基質の増加、硬化、結節形成、硝子化の有無をみる

  • メサンギウム基質の幅がメサンギウム細胞核 2個分より広い場合には、基質の増加があると判断する

  • 細胞増殖を伴わない細胞外基質成分の増加した病変を硬化と呼ぶ。硬化は基質の増加以外にも血管の虚脱で生じる

  • 病変の拡がりと分布をみる

  • 全糸球体から、病変のある糸球体数÷(全糸球体数-硬化糸球体数): 50%以上/ 未満でびまん性( diffuse/ 巣状( focal

  • 一つの糸球体で、病変部の面積÷糸球体全体の面積: 50%以上/ 未満で全節性( global/ 分節性( segemental

  • 全糸球体数が 10個以上あると評価が容易である。しかし、膜性腎症などびまん性病変を示すとわかっているものは、少数でも診断可能である。

  • 巣状の場合には、皮質のどの部位に病変が多いかをみる(被膜直下、皮質深層など)

  • 糸球体に好中球があるか:非常に多い場合、PSAGN、MPGN。どの糸球体にも2-3個見える程度:経過したPSAGN,IgA腎症の1/3

  • HE染色では係蹄壁の肥厚と表現する。PAS染色、PAM染色では基底膜そのものが染まるので基底膜の肥厚や蛇行などの表現はOK

 

尿細管・間質(皮質)の障害度:

  • 障害度は、皮質における障害を受けた尿細管・間質を全体の%として表現する

  • 変化がある場合には、尿細管萎縮と線維化が主体(慢性変化)か、細胞浸潤が主体(急性変化)かをみる

  • マッソン染色がわかりやすい;青色の線維化を示す部分、細胞増殖部、および尿細管基底膜肥厚部(萎縮した尿細管)の割合をみていく

 

血管病変の有無

  • 小動脈より太い動脈( artery)と細動脈(arteriole)とを区別して観察する。 PAM染色が見やすい

  • 細動脈では硝子様変化(動脈硬化性変化;細動脈硬化 arteriolosclerosis))の有無を主としてみる

  • 動脈では内膜肥厚(動脈硬化性変化;線維性内膜肥厚)、管腔内や内膜内の細胞増殖(増殖性内膜炎;内皮細胞障害があることを示す)、炎症細胞浸潤や壊死性変化の有無(壊死性血管炎; Masson染色で赤い染みだしが見えた場合にはフィブリノイド壊死)の有無をみる

初心者のための腎病理 事前情報のメモ

チェックする項目

  • 診断に必要な情報:年齢、腎炎パターン、ネフローゼパターン、selectivity index、出生体重

  • 重症度に必要な情報:たんぱく尿、GFRおよびその変化、CRP

  • 生活習慣病に関する情報(高血圧、肥満、糖尿病、喫煙、体格)

  • 先行感染、肝炎、喫煙、アルコール、薬歴、妊娠歴(PIH)、家族歴(Alport syn, Fabry dis,Mitochonria abnorm.)

 (解説)

  • 年齢、性別:加齢なのか老化(病気)なのか。細動脈硝子化は高血圧・糖尿病と関連が深い(老化)。小動脈硬化は年齢と喫煙に関連が深い(加齢と喫煙)。年齢は硬化糸球体数の意義を推測するのにも用いる。

  • 腎炎パターン、ネフローゼパターン、selectivity index:鑑別診断挙げるために。

  • 出生体重:低出生体重はFSGSのリスクファクター。また低出生体重は乳児死亡増加のみでなく、成人での心血管系疾患発症が増加することが知られている。

  • たんぱく尿、GFRおよびその変化、CRP:重症度判定。AKI合併ならばその原因を腎病理で説明つくか。CRPは腎炎の目安となる。ネフローゼCRP上昇していたら、悪性腫瘍合併も念頭に入れる。

  • 生活習慣病に関する情報(高血圧、肥満、糖尿病、喫煙、体格) 全てCKDの原因・増悪因子となる   

  •  先行感染が問題となる腎疾患:

  先行感染が発症のtrigger:MCNS、ANCA関連腎炎、IgAGN

  先行感染が発症要因:感染性腎炎(溶連菌、ブドウ球菌、PVB19)

  • 肝炎、喫煙、アルコール、薬歴

  肝炎・アルコール肝炎関連腎炎やIgAの鑑別に用いる。喫煙は細動脈硬化のリスク、薬歴は薬剤性腎障害。薬剤性の場合は様々なパターンがあるので注意

  • 妊娠歴(PIH)

  妊娠高血圧腎症はCKDの発症要因。PIHがひどいと線維化が進んでいる印象あり。

 

めまい

<急性前庭症候群>急性の眼振、回転性のめまい、不安定性、自律神経症状を伴う病態。
→要するに回転性めまい。
<鑑別診断>
末梢性:BPPV、前庭神経炎
中枢性:小脳梗塞、他脳血管障害
 
<HIT>前庭機能が低下している場合異常となる
検者の鼻を見てもらう。20度右に回旋させ、素早く頭位を成虫に戻す。鼻を見続けることができれば正常。→前庭神経炎は除外に使う。
ただし、AICA梗塞では小脳や脳幹だけでなく、前庭神経そのものや内耳にも栄養しているので、否定は困難。
 
<direction-changing nystagmus:方向性眼振>
注視方向により眼振の向きが異なる所見
 
<Skew deviation:斜め方向の眼偏移>
両側眼位がずれる所見。患者に検者の鼻を見続けてもらうよう指示。賢者の手で患者の片方の目を多い、その後素早く覆った手をどける。どけた瞬間眼位を評価し、偏移しているかどうか、どけた後に正中に戻る運動を評価する。
 
<HINTS Plus>
上記項目に難聴を足す。すべて末梢性を示唆していれば、中枢性は否定できる。HINTS-Plusで引っかかるのは中枢性めまいに対して感度100%。
 
<めまいに対する頭部MRI感度>
初期の感度は小梗塞(1cm以下)で感度46.7%。大梗塞(1cm以上)で92.2%。
→頭部MRIはHINTS plusより見逃しが多い。評価するなら2-3mmのthin sliceが必要。
 
<参考文献>
「common diseaseの掘り下げ方」
 
 

<多発性のう胞腎>ADPKD

<多発性のう胞腎>ADPKD
  • 頻度は3000-7000人に一人
  • 常染色体優性遺伝で、男女差なく50%に発症
  • 30歳以上では除外診断98%。2-hit theoryで発症すると言われている。
  • 15歳未満のADPKDでは43%でUSで両側腎のう胞を認めた
  • 86%は15以上で診断可能。
  • ただし、若年で検査して陰性だった場合はそのまま発症しないことを保証はしない
  • 70歳までに約半数が透析となる。
  • 我が国の透析患者の原因疾患の3%を占める(第4位)
PKD1が85%、PKD2が15%
PKD1:若年発症。68歳以上で透析導入なし。
PKD2:高齢発症。58歳未満で透析導入なし。→58歳未満で透析導入なら、PKD1。68歳以上で透析導入ならPKD2
 
□腹痛・嚢胞感染、尿路結石、嚢胞出血
□高血圧50-80%に合併、腎機能障害ない時から見られる。小児でも35%に見られる。塩分制限・ARBACEI。腎機能が低下する以前から高血圧を認めることが多い。ADPKDの原因蛋白であるポリシスチンが血管拡張・収縮に関与していると考えられる。
□肝嚢胞:MRIで83%に合併認める。加齢とともに数・サイズが増大する傾向がある。男79%、女85%と男女差があり、女性ホルモンの関与が疑われる。通常肝機能障害や症状はない。巨大な場合は、横隔膜挙上による頻呼吸、消化管通過障害、胆道・門脈圧迫による門脈圧亢進症、黄疸などが生じる。
□脳動脈瘤くも膜下出血。ADPKDは16%に生じる(一般人口では1%)。家族歴がない場合でも6%と高頻度。SAHの発症年齢は41歳で一般の51歳と比較し有意に若い。大きさは10mm以下が多い。また、30歳以下ではMRAでは認めないことも多い。一般に内頸動脈に多いが、ADPKDでは中大脳動脈、前大脳動脈に多い。家系内に集積する傾向がある。54%の症例で腎機能正常な時に起きる。26%の症例で血圧正常であっても生じる。10年毎のスクリーニングで良いとする報告もあるが、10mm以下の脳動脈瘤で家族歴がない場合でも年に0.05%年の割合で破裂することから3-5年毎にスクリーニングを行う。
未破裂動脈瘤で大きさが5mm以下でも破裂の危険性は19%あるため、脳外科に紹介する。
□嚢胞感染:30-50%のADPKD患者が経験する
□尿路結石男性21%、女性13%に認め、非ADPKDよりも多い。
□その他:膵臓脾臓甲状腺、くも膜にも嚢胞形成する場合あり。
□心合併症:左室肥大、MR、ARをしばしば認める
□大腸憩室:高率に合併し、多発性であることが多い
□鼠径ヘルニアをはじめとする腹部ヘルニアを合併する(健常人の5倍)
□総胆管拡張症高率に合併することが報告されている
□妊娠:不妊をきたすことは少なく、一般成人と同様。子宮外妊娠の頻度はやや高い。男性では精巣嚢胞や精子不動症との関連で不妊となることがある
□通常妊娠・出産を迎える30台では一般人と変化なし
。ただし、妊娠回数が増すと肝嚢胞が増大傾向にあるとされる
□eGFR低下速度は年4.4-5.5
□蛋白尿出ることあり
MRIで腎容積の測定必要
 
<ご家族も含めたtotal manegement>
患者が家族に話すメリット:早期発見・治療、予防につながるかもしれない。エビデンスは不十分。デメリット:心理的負担、将来の選択肢、社会的な差別等
お子さんには1/2の確率で遺伝する。一般的には30歳を目安に検査した方が良い。ただし、脳動脈瘤の家系は早めに検査
 
  • ムスカ適応:「両側総腎容積(TKV)が750ml以上」かつ「腎容積増大速度が概ね5%以上」
  • 尿細管の異常で起こり、その中に尿など溜まる。原因遺伝子はPKD1とPKD2でこの2つで90パーセント。PKD1の発症年齢は40-50歳。PKD2は60-70歳。嚢胞のなかのcAMPが成長に関わっており、サムスカはそれを抑制すると言われている。
  • 優先遺伝したPKD遺伝子だけでは発症しない。出生後正常であるはずのもう一対のPKD遺伝子に体細胞変化が生じ、PKD遺伝子の機能が喪失することにより発症する(2-hit theory)。具体的には尿細管径の調節が出来なくなり、尿細管が拡張しはじめ、嚢胞が形成される。
  • 2015年1月から多発性のう胞腎は指定難病に指定され、難病医療費助成を受けることが出来る
  • ADPKDは30〜 40歳代までは、ほとんど症状が現れないことが多いといわれているが、血圧が高いなど ADPKDを疑う症状がみられる場合は、早めに検査
 
  • PKDの患者会があるので便利
  • 大塚製薬のHPが役に立つ
  • NEJM reprise試験では腎機能低下、比較的高齢者に対するサムスカの効果をみている。

よく使うBPSD治療薬

<興奮・攻撃>①→④の順

①抑肝散3T/3x、昼夜逆転であれば、眠前のみをトライ
②チアプリド(グラマリール) 12.5mg分1で開始。透析患者の場合max50mg分1。原則夕で開始。パーキソニズムや過鎮静に注意
③頓服リスペリドン追加:0.5mg屯用。1時間おいて6回まで可能) (維持の場合初回1mg分2、最大6mg分2)
④グラマリールをクエチアピン(セロクエル) 糖尿病禁忌。まぁまあ鎮静強い。腎機能正常者と同じ。12.5mg分1から開始(米国dose)。
セロクエルワイパックス0.25mg 分1に変更(米国dose):最も鎮静・呼吸抑制強い。
⑥経口ダメ ハロペリドール点滴
 

<よく使う非定型抗精神病薬>

・リスペリドン(リスパダール)(認知症ガイドライン2010、日本老年医学会代替薬推奨) 半減期20-24時間。OD錠剤あり。鎮静作用少ない
・クエチアピン(セロクエル)(日本老年医学会推奨、認知症ガイドライン推奨、糖尿病にはダメ)鎮静作用・血圧低下あり、半減期6-7時間
 

<よく使う定型精神病薬>

・チアプリド(グラマリール) 15-150mg(日本老年医学会代替薬)
ハロペリドール(老年医学会慎重投与)
 

<その他>

ワイパックス(ロラゼパム):BZD系。鎮静強い。安易に使わない。せん妄や昼夜逆転を惹起する。
・一般的にせん妄治癒には1-2週間かかるので、すぐ薬が効かないと焦らないこと
 

<非薬物療法>

・そもそもせん妄には薬物療法無効。ただし、おとなしいせん妄にすることは可能。おとなしいせん妄の方が予後が悪い。
 

<HELP>

・眼鏡、補聴器をかけよ:感覚のインプットが減ると譫妄を起こす。
・抑制・拘束するな:抑制は譫妄を起こす。
尿閉、便秘は譫妄起こす:トイレ時間誘導、緩下剤を出せ。
・とにかく座らせ、立たせ、歩かせよ。 
・1 日 3 回、スタッフが「時間、場所、人」を繰り返し教えよ(reorientation)。 
・病棟に時計、カレンダーを置け(日時が判らぬと譫妄起こす)。 
・鎮痛薬は頓服でなく定時(round the clock)で出せ!
・深夜のバイタルチェックやめて不必要な覚醒を避けよ! 
・興奮譫妄で危険な時のみ抗精神病薬少量使用(セレネース、リスパダール、ジプレキサ、セロクエル)
 

<せん妄のハイリスク薬剤>

ベンゾジアゼピン : 譫妄起こす。内服している場合は減量。 突然中止しない(痙攣!)
・麻薬 : 鎮静、抗コリン作用、便秘(fecal impaction)起こす。 ただし疼痛自体も譫妄起こす。腎障害あると副作用出やすい。 中毒にはナロキソン。 NSAID や acetaminophen を定時に(around the clock)出す。
・非ベンゾジアゼピン睡眠薬: zolpidem (マイスリー)など これ自体が譫妄を起こす。極力薬物に頼らない。
・第 1 世代抗ヒスタミン薬(レスタミン、ベナ、ドラマミン、タベジール、ポララミン、ピレチア、アタラックス、ペリアクチン) 極力使用しない。第 2 世代以降を使用。患者が OTC で購入してないか聞け。
・アルコール : 過飲の場合の離脱症状には benzodiazepines 使用。 
・抗コリン薬 (ポラキス、ネオキシテープ、トビエース、ベシケア、ウリトス、ステープラ、デトルシトール、バップフォー) 尿失禁には時間でトイレ誘導。抗コリン薬低量で譫妄を起こすことは稀。
・抗てんかん薬 : てんかんリスク少なければ中止か他の製剤使用。 ・三環系抗うつ剤:amitriptyline(トリプタノール)、imipramine(トフラニール)は 抗コリン作用あり。 SSRI(パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、デプロメール、ルボックス)か、 SNRI(サインバルタ、トレドミン、イフェクサー)に変更せよ。
・H2 拮抗薬(ガスター、ザンタック、タガメット、アルタット、アシノン、プロテカジン等) 抗コリン作用あり減量するか PPI に変更せよ。 特に高用量の静注で起こる。
・抗パーキンソン薬:高用量使用でドパミン中毒起こる。減量する。 ・向精神病薬(ウィンタミン、コントミン等)抗コリン作用による。中止するか減量。 ・バービツレート:原則使用しない。漸減するか BZD に置換。
 
 
<参考文献>
被災した認知症の人と家族の支援マニュアル<医療用>
 
「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」(日本老年医学会、2005)
 

サイトメガロウイルス感染症つづき(2/2)

<腎移植後>

  • 成人においても抗 CMV 抗体が陰性の患者も多く,そのため初感染になり重症化しやすい
  •  免疫抑制薬が強力になり,CMV 感染症にならずとも, 約半数が CMV 感染を起こす
  •  治療では経口薬であるバルガンシクロビル (VGCV)が保険適用になった
  • CMV は広い臓器親和性をもつことから,さまざまな臓器に持続感染し,慢性的あるいは潜伏感染のかたちで終生,体内に存在する.腎移植の場合は移植腎とともにレシピエントに伝播する場合,またもともとレシピエントの体内に潜伏している CMV がなんらかの誘引によって再活性化する場合がある.
  • 腎移植患者では,同種免疫反応と免疫抑制の両方が関与しているため CMV の再活性化が起こりやすい状態にある.
 

CMV 感染症の定義

  • CMV 感染症は CMV 感染をウイルス学的に証明し,さらに下記❶の臨床症状を加えた❷の 9 項目中 1 項目以上認められることと定義される.
❶ 不明熱
❷ 白血球減少・血小板減少・異型リンパ球の出現・肝機能異常・間質性肺炎・消化管潰瘍 / 出血・網膜炎・腎炎・膵炎
 
  • 移植後 CMV 感染症の診断において,血清中抗 CMV 抗体価の測定は採血時期の感染症の診断意義はなく,血中ウイルス培養も時間がかかることと感受性が低いことから臨床的に有効性が低い.
  • 一方で,移植前にドナーとレシピエントの血清中抗 CMV 抗体価の測定は移植後 CMV 感染症の発生頻度や時期の予測に有用であることから強く勧められる 
  • CMV 抗原を検出する CMV 抗原血症法(CMV アンチゲネミア法)や real-time PCR 法を用いた DNA 血症の検出が,現在のところ,最も CMV 感染症の診断や治療効果の判定にすぐれている。一方で,CMV 腸炎や網膜炎のように血中の CMV 抗原やウイルスゲノムが検出されにくい病態では,CMV 感染細胞の有無を感染していると考えられる臓器の生検を行い免疫組織学的染色や in situ hybridization によって同定することが唯一の診断法となることがある.
 
1.CMV 抗原血症法(CMV アンチゲネミア法)
 本検査が陽性化することは CMV disease の診断や早期投与法開始の判断,治療効果の判断に有効であるなとの報告されているが,CMV 抗原陽性細胞数がいくつになったら治療を開始すべきか(cut off 値)については半定量的検査であることから,国際的コンセンサスは得られておらず各施設で判断基準を設定する必要がある.
 レシピエントの移植前抗 CMV 抗体が陰性でドナーの抗 CMV 抗体が陽性の場合(D+/R-)は,CMV 抗原陽性細胞数が一つでも CMV 感染症と診断し治療を開始するべきと考えられる.
● 移植前抗 CMV 抗体を認める場合は,治療を開始する分析疫学的研究の報告では,治療開始の指標として CMV 抗原陽性細胞数を白血球 10^5 個あたり 4~10個を cut off 値として良好な治療成績が報告されている
 
早期投与法(preemptive therapy)の場合:CMV 感染症の 25%以上は移植後 30日以内,その他の症例は 3 カ月(90 日)以内に発生していることから,腎移植後 3 カ月間は 1~2 週間に 1 回の抗原血症法による測定が勧められる.  
 
予防投与法(prophylactic therapy)の場合:予防投与(prophylaxis)の期間にもよるが 90~100 日間の予防投与を行った症例の CMV disease の発生は,移植後中央値 152 日(114~312 日)であることから,予防投与終了後 12 週間は 1~2 週間に 1 回の抗原血症法による検査が勧められる。ただし、日本ではCMVアンチゲネミアの診断が簡便であることから、早期投与法が用いられることが多い。
 

<治療終了の判断>

  • 抗ウイルス薬の治療期間は最短で 2 週間必要とされている.
  • 治療終了の判断は,抗原血症法による検査が 2 回陰性化したことを確認すること,もしくは陰性となってから 1 週間治療後の終了が望ましい
  • 初回検査で腎移植によって CMV の初感染を受けると考えられる組み合わせ(ドナー既感染 レシピエント初感染:D+/R-)においては,再検のうえ,レシピエントは移植後,初感染期を経て既感染(治癒)に至る過程を定期的に f/u する必要がある.
  • 一方,移植前 CMV 感染 status が既感染の症例においても,免疫抑制療法により,移植後再活性化(再起感染)が起こりうるので定期的な経過観察を行うことはやはり必要である
  • 通常,体内における CMV 感染の activity は抗原血症法で評価し,ELISA 抗体価は 1ヵ月に 1 回チェックする.
  • 胸部 CT 検査は,CMV 間質性肺炎の初期像を最も鋭敏に捉える。腎移植レシピエントは移植前に他の感染性疾患,悪性疾患の評価も兼ねて,全例胸部 CT を撮影,評価しておくことが望ましい.
  • 初感染例では,CMV 抗原血症検査が陽性化した時点,CMV disease 症状が発現(発熱)した時点で胸部 CT を行うことが望ましい.
  • 初感染・既感染を問わず呼吸器症状が発現した場合は 全例で躊躇せずに胸部CT を実施する.
  • 初感染・既感染を問わず CMV tissue invasive disease においては,組織学的診断を行うことが推奨されており,気管支肺胞洗浄液,消化管内視鏡における組織片の診断は価値がある.
<CMV腸炎、潰瘍>

・CMV 感染では胃十二指腸潰瘍が比較的高率に起こる.
ヒスタミン H 2 受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬にても難治性の胃十二指腸潰瘍は CMV 感染による潰瘍を疑う.

・レシピエントは移植前に全例上部消化管内視鏡を行っておくことが望ましい.
・初感染・既感染を問わず消化器症状が発現した場合は全例躊躇せず上部消化管内視鏡を実施する
・CMV 潰瘍ではしばしば十二指腸潰瘍(露出血管)からの出血性潰瘍による吐下血・ショックをきたす場合があり,クリッピングによる止血を最優先する.
・可能な場合には生検を行う(核内封入体細胞を確認する)。
・潰瘍病変では,しばしば抗原血症検査が陰性の場合がある.
・CMV による組織侵襲性病変の中でも比較的頻度が高く,生命予後に直結する病変として CMV 間質性肺炎と胃十二指腸潰瘍がある.
・胸部 CT 検査は,CMV 間質性肺炎による初期変化を最も鋭敏に捉えることが可
能である.
・腎移植レシピエントは移植前に他の感染性疾患,悪性疾患の評価も兼ねて,全例胸部 CT を撮影,評価しておくことが理想的である.
・消化管についても全例術前に上部消化管内視鏡検査を行っておくことが望ましい.
・初感染例では,CMV 抗原血症検査が陽性化した時点,CMV disease 症状が発現(発熱)した時点で胸部 CT を行う.また,初感染・既感染を問わず呼吸器症状が発現した場合は,全例で躊躇せずに胸部 CT を実施するべきである.
・初感染・既感染を問わず CMV による組織侵襲性臓器病変(CMV tissue invasive disease)においては,組織学的診断を行うことが推奨されており,気管支肺胞洗浄液,消化管内視鏡における組織片の診断は価値がある.
・CMV 肺炎では可能な限り気管支肺胞洗浄を行い,核内封入体細胞,DNA 血症法による CMV の確認を行うことが望ましい. このことは Pneumocystis jiroveciiや真菌性肺炎との鑑別診断上も必要である.
・同様に,消化器症状発現時には全例躊躇せずに,上部消化管内視鏡検査を行うことが望ましい.
・CMV による胃十二指腸潰瘍(露出血管)では,しばしば出血性潰瘍による 吐下血・ショックをきたす場合があり,クリッピングによる止血を最優先する.
 
<眼底検査>
  • レシピエントは移植前に全例,眼底検査を行っておくことが望ましい
  • 発症部位によっては,初期には自覚症状に乏しく発見が遅れる場合がある.特に初感染例では CMV 抗原血症検査が陽性化した場合は必ず眼底検査を実施する
  • 網膜炎では CMV 抗原血症検査が陽性化しない場合,陽性細胞数と病勢が一致しない場合がある.
  • 明らかな CMV disease 症状(発熱,他の臓器症状)が発症した際にも必ず眼底検査を行う.
  • 移植後 1 年は定期的な検査が必要である(AST ガイドライン
  • 発症は移植後 1 カ月~4 年(平均 1 年)で,1 年以後の発症も報告されており定期経過観察が望ましい 
<耐性 CMV の遺伝子解析>
  •  長期 GCV 治療継続・不適切な治療による耐性獲得が報告されている
  • 頻度は数%~10%である(臓器・地域によりさまざま)
 

<治療薬>

  • D+/R-,ATG 投与群などの高リスク群では,早期投与だけではな予防投与が行われている

  • 高度な顆粒球減少症には,G-CSF の投与も考慮すべきである .

  • 重症感染症に対しては,最初から免疫抑制薬の減量を考慮すべきである

  • わが国においては,小児における VGCV の安全性は確認されていないのでGCV の静脈内投与を行うべきである

  • わが国で施行された無作為化,非盲検,実薬対照,2 期クロスオーバー,多施設共同試験によれば,発現率の高い副作用としては,肝機能異常 3 例(7.9%),白血球数減少 2 例(5.3%),汎血球減少症 2 例(5.3%),倦怠感 2 例(5.3%),上腹部痛,胃不快感,肺真菌症,好中球数減少,低蛋白血症,発疹各 1 例(2.6%)であった.

  • また,初期治療期間における重篤な有害事象は 3 例 3 件で,白血球数減少 2 件(5.3%),好中球数減少 1 件(2.6%)であった

早期投与法(preemptive therapy):

抗原血症法による検査を行い,陽性であった場合 VGCV450~900mg/ 日を投与する(腎機能により投与量,投与 間隔を決定する).抗原が 2 回つづけて陰性になるまで投与継続する.耐性化を防ぐため最低でも 2 週間継続する.わが国で広く採用されている方法である .

 予防投与法(prophylactic therapy):
CMV 感染の有無に関わらず,予防を目的として投与する .100 日間の継続投与が必要とな る
 

<CMV 感染症の治療>

 軽症感染症に対して
● VGCV450mg1 日 2 回投与する.ウイルスの排除がなされるまで投与継続する.
● 耐性化を予防するために最低 2 週間の投与が必要となる.
● 免疫抑制薬減量による拒絶反応の頻度も高くなるため,顆粒球減少症に対しては免疫抑制薬の減量を最初から行わず,VGCV の減量を優先させる
● 高度な顆粒球減少症には G-CSF の投与も考慮すべきである
 
 重症感染症に対して
● 最初から免疫抑制薬の減量を考慮すべきである
● 免疫抑制薬の減量
● CMV syndrome および disease の治療中は抗ウイルス薬の投与とともに免疫抑制量の適正化・減量を考慮する必要がある.
● Calcineurin inhibitor (CNI)の種類は CMV 感染症の治療結果に影響は及ぼさない が,CNI 濃 度 の 検 討 で は cyclosporine で ト ラ フ 濃 度 が 150ng/mL 以 下,tacrolimus で 5ng/mL 以下で治療効果が良好であったと報告されている  .
● CMV disease 時に MMF 投与量を減量もしくは中止するべきか,その適切な期間についてのエビデンスはないが,CMV 感染症に対して MMF 投与量を 50%減量もしくは中止とともに抗ウイルス薬による治療を行う事によって CMV 血症の遷延なく治療できると報告されている  .
● 一方で,MMF の長期間の減量・中止によって急性拒絶反応の発症のリスクが高くなることを十分考慮する必要がある.
●移植前にドナー・レシピエント双方の血清中抗 CMV IgG 抗体を測定して,ウイルス保有の有無を確認することが必要である  .
●腎移植 CMV D+/R-症例において,CMV 感染症の予防としては,抗ウイルス薬の予防投与と早期投与はともに有効である .
●予防投与は,急性拒絶反応治療後・血液型不適合症例・抗ドナー抗体陰性症例に対して考慮する.VGCV450mg/ 日で最長で 100 日間の投与継続が可能と考える  .
●早期投与は,CMV 抗原血症検査が陽性であった場合速やかに開始し,2 回つづけて陰性になるまで 2 週間以上継続投与する.CMV 感染の場合,GCV静脈内投与または VGCV450~900mg/ 日経口投与する.CMV 感染症の場合,GCV 静脈内投与を先行させ,症状が軽減すれば VGCV450~900mg/日経口投与に変更する.これとともに免疫抑制量の適正化・減量を考慮する .
 

<参考文献>

Clin Exp Rheumatol. 2014 May-Jun;32(3 Suppl 82):S73-5. Epub 2014 May 16

「レジデントのための感染症診療マニュアル」

「腎移植後 サイトメガロウイルス感染症の診療ガイドライン

ウイルス 第 60 巻 第 2 号,pp.209-220,2010