サイトメガロウイルス感染症
目次
<一般感染>
<骨髄移植後>
<腎移植後>
<一般感染>
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一般人口の多くが不顕性感染(40-100%)で免疫正常者では完全に無症状であることが多い
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本邦成人の抗体保有率 は 80 ~ 90%
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感染の機会は保育園、家庭、性行為、輸血。
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臨床増はEB Vと同じであるが、免疫正常者では咽頭炎、リンパ節腫脹の程度はずっと軽度である傾向がある。
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EBVと同様何事もなく軽快するすることが多いが、稀にEBV感染症と同様の合併症が報告されている(肺炎、脳炎、脳脊髄膜炎、横断性脊髄炎、Guillain-Barre症候群、心筋炎、心膜炎、溶血性貧血、好中球減少症、血小板減少症)
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治療は移植の世界ではCMVなどのウイルス量の変化を置くことにより診断している。
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支持療法が基本であり、抗ウイルス薬は使用しない
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アンチゲネミアは、末梢血より分離した多形核白血球(好中球)を、CMVpp65抗原に対するモノクローナル抗体と反応させ、ペルオキシダーゼ法によりCMV抗原陽性細胞(多形核白血球)を検出する方法とされています。結果は迅速に分かるとされ、モノクローナル抗体の違いから、HRP-C7法とC10/11法が現在は使用されています。感度は非常に高く、CMVウイルス血症の同定には有用とされていますが、欠点として、末梢血中の多形核白血球が少ない場合には測定できず 感度もが低下する、目視で計数するため主観が入りこむ余地があるなどに注意が必要。免疫正常者のCMV肝炎の診断にアンチゲネミア法は保険適応が通っていない.
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CMVで血管炎の発症契機となったという報告は多くあるが、機序は不明。
<骨髄移植後>
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同じ細胞性免疫障害であっても、本ウイルスにより問題を生じる臓器は基礎疾患により異なる。HIV感染症では網膜炎が最多であるが、骨髄移植患者では肺炎が最多である。一般の網膜炎の診断には眼科医による網膜の観察で十分であるが、その他(食道炎、結腸炎、肺炎など)は組織所見で封入体の存在と炎症の存在が必要である。
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骨髄移植後ではレシピエントにCMV感染がなければ、CMV陰性の骨髄。レシピエントにCMV感染の既往がある場合は再燃率は同種移植で70%、自家移植で40%程度であるが、CMV量をモニターし、増加した際に先行治療(preemptive treatment)を行うことにより20-40%程度に下げることができる。この先行治療を早期から使用するためCMV感染症(肺炎、腸炎)の発症は移植後1-2カ月から4-6カ月にずれている。骨髄移植後感染症では肺炎(63%)、腸炎(26%)が多く、肝臓、網膜なども障害される。胃腸炎は食欲低下、悪心・嘔吐、下痢を認め、GVHDに合併することが多い。肺炎以上に治療抵抗性である。網膜炎はHIVと異なり稀である。
<HIV感染によるサイトメガロウイルス感染症>
a.網膜炎:CD4<50/mm3以下になると特に多くみられるようになる。
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基本は眼科医の視認による、トキソプラズマ症が重要な鑑別診断対象となるが、その場合多くはトキソプラズマ脳症を合併している。血液の培養や抗原血症(antigenemia)は特異性に問題がある場合があり、必ずしも陽性=治療対象とすべきではない。
b.眼球以外の病変
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食道炎:CD4<50未満の症例が多い。 浅い潰瘍を食道下部に広範囲に認める。治療に対する反応はよく、1-2週間で効果を認める。
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結腸炎:CD4<50未満の症例が多い。発熱、腹痛、下痢などを認める。内視鏡では粘膜の潰瘍を認め、政権組織は典型的な封入体を認める。治療に対する反応は悪い。
(つづく)